梵鐘(印山寺梵鐘)


明治の廃仏毀釈という混乱を免れてきた潮音院の宝物。

1714年鋳造で、側面には、この梵鐘の、由緒が彫られている

 

 

 

肥之前州平戸印山寺鐘銘並序

 

奥有精舎号印山寺前之太守隆信公

 

法名印山道可居士之遺址也爾来多

 

更歳月矣叢龍居之臥雲継軌瑜伽之

 

妙業唯鎮護国家而利有情方其磬聲

 

徹暁持誦接宵経耳澄心絶塵割愛今

 

欠一梵鐘故鎔鋳之以荘厳 遺址之

 

法林兼報四恩洪徳而己

 

 

 

(以下読みくだし)

 

  肥の前州平戸印山寺の鐘銘並びに序

 

奥に精舎有りて印山寺と号す

 

前(さき)の太守隆信公の法名 印山道可居士の遺址なり

 

爾来 更に歳月を多くす 叢龍(四海竜王)は之に居し

 

臥雲は軌を継ぐ

 

瑜伽(ゆが)の妙業(真言密教の修法)は 唯国家を鎮護し有情(国民)を利す

 

方に其の磬聲(梵鐘の音)は暁を徹して誦を持し宵に接す

 

経耳は心を澄まして 塵(煩悩)を絶つ 割愛

 

今 一つの梵鐘を欠くが故に  鎔鋳し之を以て荘厳す

 

遺址は之 法林(寺院・僧堂)と 四恩洪徳に報いるを兼ねん

 

 

 

(以下、印山寺梵鐘の銘文)

 

   銘  日

 

 鳥兎生一 清?含霜

 

  送夕賓旦  渡江伝郷

 

 若衆游息 天龍致祥

 

 慈風無際 庭宇吉康

 

 

 正徳四甲午年十月吉祥日

 

    願主 当寺十三世法印盛陽

 

    同  長峰長右衛門尉次政

 

            前佐賀住

            谷口安左衛門

 

 

 

(以下、読みくだし)

 

      銘に曰く

 

 烏兎 一に生ず        清? 霜に含む

 

 夕に送り 旦に賓す    江を渡り 郷に伝わる

 

 若衆は 游息し        天龍は 祥を致す

 

 慈風 際無く        庭宇は 吉康す

 

 

 1714年十月吉祥日

 

    願主  当寺十三世住職 法印盛陽

 

    同  長峰長右衛門の尉(じょう) 次政(つぎまさ)

 

            前佐賀住

            谷口安左衛門<佐賀藩の御用鋳物師谷口氏・四代目安左衛門兼清 (享保3年・1718没)>

 

 

 

*烏兎・・・(うと)金烏玉兎の略。太陽には三本足の烏が、月には兎が住む。

      月日、歳月、光陰の意味

 

*清?・・・すがしき音(声)

 

この梵鐘を鋳造した谷口安左衛門の作品は、九州各地に散見される。

 

谷口師は1718年没。印山寺梵鐘は、わずか4年前の作品ということがいえる。

極めて晩年の作品である。